季節の病気 2022年5月「気象病(頭痛、めまい)」

気象病

5月は寒暖差が大きく、下旬には梅雨に入る時期が到来します。
雨が降ると、首や膝が痛む、頭痛が悪化する、めまいを起こすなど、痛みや不調を訴える人が少なくありません。
こうした天候の変化による不調は気象病とよばれます。
雨の日に起こりやすいことから、湿度の変化が原因と思われがちですが、実際は湿度ではなく気圧の変化により引き起こされる可能性が高いと考えられます。
雨の日や湿度の高い日は、気圧が低くなります。
すると身体への外圧が減るため血管が膨張し、交感神経が血管を収縮させてこれを元に戻します。
このように気圧は自律神経に影響を及ぼしています。
次に、気象病が起こりやすいことには内耳が深く関係していると考えられています。
中部大学・生命健康科学部理学療法学科の佐藤純教授の研究グループは、愛知医科大学・医学部と日本獣医生命科学大学・獣医学部との共同研究により、マウスの内耳の前庭器官に気圧の変化を感じる場所があることを発見しました。
気象病が起こりやすい人は、この機能が敏感になり、自律神経を介して症状が悪化すると考えられます。
今回は、気象病としてのめまいと頭痛について解説します。

めまい

めまいの多くは内耳の機能の異常です。
内耳は聴覚を司る蝸牛と、平衡感覚を司る前庭(卵形嚢・球形嚢・三半規管)からできています。
三半規管が回転運動を感知し、卵形嚢や球形嚢にある耳石器が直進運動を感知します。
めまいの大半は「良性発作性頭位めまい症」といわれています。
この病気は、耳石器の耳石が三半規管に入り、頭を動かしたりしたときに、耳石がその中を動くために起こります。
よく知られている「メニエール病」は、内耳にリンパ液が溜まる内リンパ水腫を原因とします。
これらのめまいは原因が特定されていますが、原因不明で天候により症状が悪化する場合は、気象病かもしれません。
内耳が敏感になっているため、気圧の変化を感知し、直進運動や回転運動として脳に情報を伝えていると考えられます。
内耳が原因でない場合は、脳梗塞、脳腫瘍などの重大な病気が隠れている恐れもあります。
めまいだけでなく、嘔吐したり、吐き気を催したり、ろれつが回らない、身体のどこかが痺れるなどの症状が現れた場合は、脳の病気を疑って医療機関を受診することをおすすめします。

頭痛

「国際頭痛分類」では、頭痛のタイプを頭痛そのものが原因である一次性頭痛と、他の疾患が原因となる二次性頭痛に分けられています。
一次性頭痛は、片頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経頭痛、その他の一次性頭痛の4種類です。
片頭痛は血管の拡張が原因といわれています。
緊張型頭痛は、頭や首を囲む筋肉が緊張することによります。
三叉神経・自律神経頭痛は、顔面や頭部の感覚を司る三叉神経が過敏になり、それによって副交感神経系が活性化され、鼻水や鼻づまり、結膜の充血、涙が出る、まぶたが腫れる、瞳孔が縮む、顔からの発汗といった自律神経症状があらわれることが特徴です。
気象病は、これらの頭痛をさらに悪化させると思われます。
佐藤氏によると、気象病を訴える人の血管表面では交感神経が伸長し、痛みを感知する神経とつながることで自律神経の興奮が直接痛みを誘発している可能性があるそうです。
また痛みを感知する神経に本来あるはずのないアドレナリン受容体が生じているそうです。
アドレナリン受容体は、交感神経の伝達物質であるアドレナリンやノルアドレナリンを受け取る受容体です。
佐藤氏は、このような交感神経の興奮により痛みが生じるメカニズムを「交感神経依存性疼痛」と名づけています。

 

参考文献
日本頭痛学会ホームページ『国際頭痛分類』
中部大学ホームページ『気圧の変化を感じる場所が内耳にあった ―気象病や天気痛の治療法応用に期待― (佐藤純教授らの共同研究グループ)』
佐藤純(2017)『天気痛』(光文社新書)
高橋正絋(2012)『薬も手術もいらない めまい・メニエール病治療』(角川新書)