季節の病気 2021年10月 「食中毒」

食中毒

食中毒は気温や湿度の高い夏に多いと思われがちですが、意外と秋(9~10月)も多く発生しています。
厚生労働省の「令和2年月別食中毒発生状況」によると、事件総数887件のうち、最も多かった月は10月の123件でした。
(患者数としては総数14,613人のうち最も多かった月は8月の3,145人)
発生原因は、約65%が細菌、約25%がウイルスでした。
梅雨時期(5月~6月)と夏(7月~9月)は湿度や気温が高く、細菌が増えやすいので、細菌性の食中毒の発生件数が増加し、冬(12月~3月)は、ノロウイルスなどのウイルス性の食中毒の発生が見られ、春や秋には、他の時期に比べて、自然毒による食中毒が多く発生していると分析されています。

細菌性食中毒

細菌性食中毒として、最も多いのがカンピロバクターです。
その他に腸管出血性大腸菌(O-157など)やサルモネラ菌が、よく知られています。
食中毒菌の多くは35℃くらいが最も増えやすいといわれています。低温でも生き残ります。
冷蔵庫の温度の目安となる10℃以下では細菌の増殖速度が緩やかになり、冷凍庫の温度の目安となる15℃以下では増殖が停止しますが、室温に戻すと再び増殖をはじめます。
長期間の保存には注意が必要です。
75℃以上1分間の加熱で死滅します。

ウイルス性食中毒

ウイルス性食中毒として最も多いのがノロウイルスです。
ノロウイルスによる急性胃腸炎や食中毒は、一年を通して発生していますが特に冬季に流行します。
感染すると嘔吐、下痢、腹痛などを引き起こします。
ノロウイルスを原因とした急性胃腸炎は食中毒としての経口感染だけでなく、感染者の糞便や吐しゃ物、ドアノブ、タオルなどを介した接触感染や、さらには飛沫感染、空気感染もあります。
ノロウイルスによる感染症が多い理由は、このように複数の感染経路があるからだといえますが、その他にアルコールが効かないことも挙げられます。
ウイルスにはエンベロープという膜構造を持つタイプと持たないノンエンベロープタイプがあります。
エンベロープはアルコールの作用で破壊されてウイルスは失活します。
それに対しノンエンベロープタイプにはアルコールが効きません。
ノロウイルスはノンエンベロープタイプです。
これに対しては、次亜塩素酸ナトリウムなどの塩素系除菌剤が有効です。
塩素濃度200ppmの次亜塩素酸ナトリウム(原液6%の次亜塩素酸ナトリウム液を200ppmにする場合は300倍に希釈)で不活化できます。
加熱処理では85℃以上1分間で死滅します。
急性胃腸炎の原因ウイルスとしてはノロウイルスの他にロタウイルスというものがあります。
ロタウイルスに感染すると嘔吐、下痢、腹痛など、ノロウイルスと同様の症状を引き起こしますが、こちらは乳幼児に多いことが特徴です。
ロタウイルスにはワクチンがあり定期接種となっています。

自然毒

自然毒にはキノコ、ふぐ、貝類などがあります。
毒キノコはいずれも嘔吐と腹痛を引き起こします。
他にもキノコの種類によって多様な症状を引き起こします。
中でもムスカリンという毒成分を持つキノコは多く、これらは副交感神経に作用して涙や唾液などの分泌増加、瞳孔縮小などを引き起こします。
フグ毒による中毒症状は食後30分から3時間以内に、口唇や舌のしびれ、嘔吐などの症状が現れます。
重症化すると運動麻痺や呼吸困難になり、死亡するケースもあります。
フグ毒は通常の加熱では取り除くことができません。

 

参考文献
『令和2年食中毒発生状況』(厚生労働省)
『MSDマニュアル家庭版』(MSD株式会社)