季節の病気 2021年9月 「健康増進普及月間」

近年、国民の平均寿命は年々伸長しているものの、糖尿病、がん、心臓病、脳卒中等の生活習慣病の増加が問題となっています。生活習慣病の予防は、日常生活が制限されることなく生活できる期間である「健康寿命」を延ばすためには極めて重要です。政府は、毎年9月を健康増進普及月間と定めて、運動習慣の定着や食生活の改善、禁煙などの健康づくりの実践を促しています。今回は、主な生活習慣病の概況について解説します。

糖尿病

現在、日本の糖尿病患者はおよそ1000万人といわれています。日本糖尿病学会が示す糖尿病の診断基準は、空腹時血糖値126mg\dl、ヘモグロビンA1c6.5%ですが、この段階では自覚症状の無いケースが少なくありません。そのため多くの人は検診などをきっかけに医療機関を受診しますが、検診を受けずに早期発見の機会を逃したり、検診を受けても治療を放置すると、自覚症状が無いまま病状は進行してしまいます。口渇、多尿などの症状が出たところで初めて受診したときには、すでにかなり進行している恐れがあります。厚生労働省の人口動態統計によると、令和元年の糖尿病による死亡者数は13,846人でした。糖尿病自体は、死亡率が高い疾患ではありませんが、進行して網膜症、腎症、末梢神経障害という三大合併症になった場合、QOL(クオリティオブライフ:生活の質)は著しく低下します。また死亡率の高い他の疾患に罹るリスクも高まります。日本糖尿病学会が公表している2001~2010年の45,781人の糖尿病患者を対象とした調査
によると、死因第一位は、悪性新生物(がん)38.3%、第2位は、感染症17.0%、第3位は、血管疾患14.9%でした。一方、人口動態統計における2010年の日本人一般の死因は、悪性新生物が29.5%、2位心疾患15.8%3位脳血管疾患10.3%、4位肺炎9.9%です。悪性新生物に関しては、一般が29.5%に対して、糖尿病患者は、38.3%ですから、相関関係が明らかです。つまり糖尿病は、がんに罹るリスクを高めるのです。また糖尿病が感染症リスクを高めることについては周知の事実となっています。

がん

現代では、日本人の2人に1人は生涯のうちにがんに罹り、3人に1人はがんで亡くなっています。令和元年の悪性新生物による死亡率は全死因の一位を占めており、27.3%でした。昭和56年以降、脳血管疾患を抜いて日本人の死因の第1位です。糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病は、血管を損傷し、慢性炎症を引き起こします。がんと炎症には相関関係があるので、生活習慣病はがんのリスクを高めるといえます。また生活習慣は遺伝にも影響を及ぼします。そのため遺伝的にがんを発症しやすい体質だとしても、生活習慣の改善により発症するリスクを下げることができるのです。このように後天的に遺伝子の働きが変化する現象は、エピジェネティクスという学問領域で研究されています。

心疾患、脳血管疾患

人口動態統計によると、令和元年の死因は、心疾患が第2位15.0%、脳血管疾患が第4位7.7%となっています。このうち生活習慣病に大きく影響される疾患としては、心筋梗塞や脳梗塞などが挙げられます。これらの疾患は、高血圧、脂質異常症、糖尿病から、動脈硬化を経て進行していくパターンが多いといえます。特に脳梗塞による死亡者数は、脳血管疾患による死亡者数の半数以上を占めています。