季節の病気 2021年8月 「熱中症」

今月のテーマは「熱中症」です。
熱中症とは、気温が高い環境で起きる障害の総称です。
毎年数百人から、多い年では千人を超える人が亡くなっています。
平成30年の死者数は1581人、令和元年は1224人、令和2年は平成30年と同程度と予測されます。
ここ数年の死者数はこのように高水準にあります。その多くは65歳以上の高齢者であり、発生場所は住居が多いという傾向が見られます。

重症度分類

日本救急医学会が2015年に作成した「熱中症診療ガイドライン」によると、熱中症は重症度によって次のように分類されます。
Ⅰ度:めまいやふらつき、立ち眩みなどを呈する「熱失神」、筋肉痛やこむら返りなどを呈する「熱痙攣」
Ⅱ度:口渇、頭痛、吐き気、倦怠感、集中力や判断力の低下などを呈する「熱疲労」
Ⅲ度:意識障害、けいれん、臓器障害などを呈する「熱射病」

熱中症のメカニズム

気温が上昇すると、血液が皮膚の方に集中し熱放散が促進されます。
さらに上昇すると発汗による熱放散が行われます。
気温が高くなるに連れて皮膚からの熱放散よりも発汗による方が優位になります。
通常はこのようなメカニズムによって体温調節が行われます。
しかし気温が高い環境では、大量の発汗によって通常の体温調節機能に支障をきたします。
体内の血液量が減少するため脳の血液量も減少し、熱失神の症状が発現します。
またナトリウムが欠乏し、熱痙攣の症状を引き起こします。
さらに脱水が進むと、循環血流量を保つために内臓の血液も動員され、その結果内臓の機能障害を引き起こします。
この病態が熱疲労です。この脱水状態が続くと高体温になり、脳の障害が起こり、意識障害やけいれんを引き起こします。

熱中症リスクの高い人

高齢者や小児、基礎疾患のある人、特定の薬を服用中の人は、熱中症リスクが高くなります。
①高齢者:高齢者は、口渇を感じにくくなったり、発汗が低下するなどによって、暑さへの対応力が低下します。
②小児:小児は体重当たりの体表面咳が大きく、熱が体内に侵入しやすいという特徴があります。
③基礎疾患のある人:心不全、心筋梗塞の既往歴がある人は、心拍出量の低下により、血流量が低下する恐れがあります。糖尿病は尿量が増加することにより脱水の恐れがあります。
④熱中症リスクを高める薬を服用中の人:抗コリン薬は発汗を司る交感神経の伝達を遮断するため、発汗量が低下し、体温調節機能が低下します。利尿剤、心抑制薬を服用している人は循環血流量の低下により体温調節機能が低下します。

水分・塩分補給

熱中症対策としては、一般的に水分と塩分の補給が必要だといわれます。
しかし実際に食塩水では速やかに体内に吸収されません。
ナトリウムは小腸においてブドウ糖と1:1の割合で吸収されます。
そのため水分と塩分に加えて糖分を適切な比率で摂取することが必要になります。
市販の経口補水液はこの目的に沿ったものだといえます。
スポーツドリンクにも一定の効果はありますが、経口補水液と比べて塩分が少なく、糖分が多くなっています。
また水だけの摂取は、ナトリウム濃度が低くなり、熱中症を悪化させる恐れがあるので危険です。

 

参考資料
「熱中症診療ガイドライン2015」日本救急医学会
「汗はすごい」(ちくま新書) 菅屋 潤壹(著)