季節の病気 2021年7月 「虫さされ」

夏の皮膚トラブル「虫刺され」

今月のテーマは「虫刺され」です。まずは最も多いといえる蚊について解説します。刺されたときのかゆみの原因は、蚊の唾液に含まれる抗凝血成分に対するアレルギー反応によるものです。この反応には、刺された直後に反応する即時型と、刺された後1~2日後に反応する遅延型があります。即時型では、IgE抗体を産生し、すぐに異物を排除します。蕁麻疹やアレルギー性鼻炎などがこれと同じメカニズムです。一方、遅延型では、まずマクロファージが異物を取り込み、その情報をT細胞へ伝達します。その後免疫機能が活性化され、アレルギー反応を引き起こします。接触皮膚炎や金属アレルギーなどがこれと同じメカニズムです。ところで、年齢によって蚊に刺されたときのかゆみの生じ方が異なることをご存じでしょうか。初めて蚊に刺された赤ちゃんは、かゆみを感じません。その理由は、抗体がまだできていないため、即時型も遅延型も働かないからです。乳幼児期~幼児期になると、蚊の唾液成分を異物として認識するようになり、抗体ができ始めます。刺されてからかゆくなるまで1〜2日かかります。遅延型のみ働くようになるのです。幼児期~青年期になると即時型も出現するため、刺されてから2~3分でかゆくなります。そのかゆみは1~2時間で治まりますが、翌日以降、遅延型が働き再びかゆくなります。青年期~壮年期になると遅延型が働かなくなるため、刺されてもすぐにかゆくなるだけで、翌日以降かゆみは感じなくなります。老年期になるといずれの反応も生じないとされますが、実際には個人差がかなりあるので一概にはいえません。
次に、重大な症状を引き起こす虫刺されとして代表的な蜂について解説します。中で最も危険なスズメバチは、5月頃に女王バチが巣作りを開始しますが、働きバチが増えて攻撃性が高くなり、事故が多くなる時期は8~9月頃といわれています。ですから、これからの時期は特に注意が必要です。ハチに刺されると、激しい痛みを生じたり、赤く腫れることもあります。初めて刺されたときは、これだけで治まります。このメカニズムはアレルギー反応ではなく、ハチの毒によるものです。毒には痒みや痛み、炎症反応などを起こす複数の化学物質が含まれています。(ヒスタミン、セロトニン、アセチルコリンなど)2回目以降刺されると、毒に対するアレルギー反応も働き、刺された直後に蕁麻疹が出たり、ひどい場合は意識消失や血圧低下などの全身反応を起こし、時には死に至ることもあります。これらはアナフィラキシー型過敏症と呼ばれる即時型反応です。また刺された後1~2日後に発赤や腫れなどの局所反応を生じることもあります。これは遅延型が関与しているという報告もありますが、アレルギー反応ではなくハチ毒が原因だという見方もあります。

ハチに刺されないために注意すること

通常、スズメバチの方から人を襲ってくることはないといわれますが、巣に近づくと襲われる危険があります。羽音を立てながら周りを飛び回り威嚇してきます。これ以上近づいたら攻撃するという警告行動です。そのようなときは、静かにその場から離れましょう。手で振り払おうとすると、興奮して攻撃してきます。

ハチに刺された場合の対処

刺されてしまった場合は、傷口を水道水などで洗い流し、毒を絞り出すようにします。抗ヒスタミン成分入りの市販の外用薬を塗布するのもよいでしょう。意識の低下や呼吸困難、血圧の低下などの全身症状が現れた場合は、救急車を呼ぶなど緊急的に対処しましょう。